MOTO
（W-BASE）		  
WARP誌で好評連載中の「Backyard Joint」にも登場してもらった「W-BASE」のマスターブレイン、MOTO氏のインタビュー!!





　コレは今でも自慢なんだけど、オレ３日で補助輪外した男だからね。だからチャリは４歳から補助なしで乗ってた。
　麻布が地元で当時はまだ緑も多くて、オレ虫キチガイだったからガキの頃はチャリ乗って虫取りに行くのが定番の遊び。子どもが自転車に乗れるようになると急に行動範囲が広がるでしょ、それが楽しくて楽しくてホントいっつもチャリ乗ってたな。あの頃って周りにチャリ乗るのが上手い奴って必ずいたじゃん、たぶんそういう感じの子どもだったと思う。
　小学校まではギア付きのスーパーカーちっくなチャリ乗ったりロードマン乗ったりしてたんだけど、小６の時にお決まりの「E.T」を観たんだよね。今でも忘れない82年、「E.T」であのKUWAHARAのBMXを見て衝撃受けた。ダートとかも普通に走ってるし、「なにコレ!? 」って感じでときめいちゃって。
　「E.T」から入ってるところがクラシックすぎるんだけど、でもあの時代の子どもでチャリが好きだったら絶対BMXは通ったはずじゃないかな。あの頃の少年にとってBMXの登場はホント新しかったと思うよ。だから今でもオレは基本的に80'sのBMXが好きで、パーツとかは今でも集めてる。あの時代の空気感っていうかスタイルとかテイストには今でも刺激受けてるし、ヤラレちゃうんだよね。
　それで「E.T」を観て当然BMXがめちゃくちゃ欲しくなっちゃって、中１の誕生日の時にお父さんに手紙を書いて、どれだけBMXがヤバくてどれだけ自分がBMXを欲しいのかっていう熱い思いを伝えて（笑）。そうしたらその辺の自転車屋で完成車のBMXを買ってくれて、もうその時は超アガって乗りまくった。とにかくデコボコ道でも音がしないし、どんな道でも走れるっていうのにまず驚いたよね。
　乗り方に関しても当時はホントに情報もなくて、たまたま近所に住んでた外人でBMX乗ってる奴がいて、そいつらの走り方を見たりしてジャックナイフとかいわゆるBMX的な乗り方を覚えていった感じかな。そういえば当時オレがバイブルみたいにしてたBMX本があって、確かまだ持ってるよ（写真）。




まあそんな感じでハマってたら自分だけどんどん上手くなっちゃって、気づいたら周りの仲間はみんなやめてたっていう（笑）。それからは地元にあった「麻布サイクル」ってお店でお世話になって、結構BMXライダーたちが溜まってて、初めは上手い人たちともあまり話せなかったりしたけど、そのうちみんなで駒沢に遠征したりして楽しかったな〜。なんかこう道場破りじゃないけど、港区を出るってだけで緊張したりして（笑）。
　それからはもうBMXの世界にどっぷり。当時はどれだけトリックをマスターできるかが勝負みたいな感じで、麻布サイクルでダビングにダビングを重ねてノビノビになったアメリカの大会のビデオ見て興奮しながら新しいトリック仕入れたりしてた。やっぱりまだ日本にはあまり情報が入ってなかったから。その辺はあの時代のスケーターとかと一緒だと思う。でも逆に情報が少ない分、自分たちで楽しみを発見する面白さもあったよね。

それでも結局本場はアメリカで、特にAFA（American Freestyle Association）っていう組織の大会のトロフィーがとにかくカッコよくて、それを手に入れるのがずっと夢だったんだけど、大学時代の89年に短期留学で初めてアメリカに行ったんだよね。場所はテキサスだったんだけどもうBMXやることしか頭になくて、行ったら行ったで案の定、向こうでも乗ってる奴がいて友達もできたりしてすごい楽しかった。しかも滞在中に友達に誘われて地元の大会に出たんだけど、それが見事にAFA主催の大会で、さらにＢクラスにエントリーしたらなんと３位に入賞できて、夢だったその念願のAFAのトロフィーを貰っちゃったんだよね。
　その時はすげー嬉しかったんだけど、なんだか夢が叶っちゃった気分になって日本に帰ってきたらトリックばっかりやるのはもういいかなって。それからはトリックもやるけど、代々木のホコテンや駒沢でランプに入ったりもするし、普通にストリートライドやったり、楽しく乗れればなんでもいいっていう風に考えるようになって。
　だからW-BASEもBMXがメインだけど、ジャンル関係なく楽しければいいっていうスタンスでやってる。基本はカスタムメインの店、車で言えばオートバックスみたいな感じなのかな。
　今では「DURCUS」っていうブランドでBMXやFIXEDのフレームも作ったりもしてるけど、それはやっぱり90年代がとにかく安く安くで19800円でBMXの完成車を売るような時代だったから。自分もそういう部分に関わったこともあったし、だからW-BASEではしっかりしたクオリティーの自転車をリーズナブルなプライスで出せればっていう思いで作ってる。
FIXEDの盛り上がりに関しては最高だし大歓迎だよね。MASHをはじめ外国から訪ねてくれる奴らもすごく多いし、色んな交流も生まれてるし。スケーターもそうだし、昔BMXに乗ってた連中がFIXEDでチャリに復活してくる奴がいたり、ストリートバイクの新しい波だよね。トリックやったりとかもすごく面白いし、むしろFIXEDに乗ってトリックの面白さに気づいた子たちには是非BMXにも乗ってほしいと思う。
　ただブレーキに関してはうちも店をやってるから言っておきたいんだけど、ブレーキを付けることは決してカッコ悪いことじゃないってこと。付ける付けないは見た目の問題じゃないし、誰それが付けてないからとかいう理由でブレーキを付ける付けないの判断はしてほしくないな。この文化を大事にしたいからこそ、そこの部分は乗り手にもしっかり認識して判断してもらいたいよね。だってこのまま単なるブームで終わらせたくないからね。
　
　最近は自転車っていう乗り物自体が世の中的にすごく注目されてるし、もっともっと盛り上がれば絶対楽しいと思う。今はホントに自転車に色んな楽しみ方があって良い時代だしね。
　オレの場合は４才で補助輪を外せた時、「E.T」を見て初めてBMXに乗った時の興奮や感動だよね。楽しく乗るっていう純粋な気持ちが一番大事だと思う。オレは今でもBMXに乗っててあの頃と同じくらい楽しんでる。BMXはバイシクルモトクロスの略なんだけど、自分の名前が「モト」っていうのも実は「モトクロス」から来てるんじゃないかって思ってるくらいだから（笑）。

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