Akira Ozawa
( T19/CARNIVAL)
07/8/24 up
 

故大野薫氏のショップ、湘南「ベティーズ」をはじめ、
原宿「ストーミー」 「ムラサキスポーツ」 上野「マックスモーション」 下北沢「バイオレントグラインド」など、
個性的なショップが群雄割拠し、ライダーたちが激しくシノギを削っていた輝かしいあの時代・・・・・。
ベティーズの大瀧ひろし氏が結成した「T-19」は、
今でもスケートがライフスタイル以外の何物でもなかったあの頃の空気をまとったチームである。
中でも当時ムラサキ上野店を代表するトップライダーだった尾澤彰(アキラ)氏は、
日本で最も先鋭的なストリートスケーターのひとりだったことは間違いない。
まだアメリカ人の見よう見まねをしていたあの時代に、
アキラ氏は人並み外れた想像力と抜群のセンスで自分だけのスタイルを身につけ、
すでにストリートスケーティングが "Style Wars" であることを滑りで示していた。
ゆえに日本人で対等にアメリカ人たちと渡り合えると思えた数少ないスケーターでもあった。
(注:実際にアキラ氏は94年にSFで行われた大会 "Back To The City" に出場し、
日本人としては最高位の13位に入り、これはあのダニー・ウェイよりも好成績だった)

あれから20年近くが経ち、アキラ氏はスケートのデッキをトラックバイクに変えて街中を走り回っている。
スポットからスポットへ、都内をまるでステルス爆撃機のように攻めまくるそのスタイルは、
ストリートスケーティングのアティチュードそのもので、シーンのパイオニアであるメッセンジャーたちの走りとはまた違う。
さらにアキラ氏は、そうした新しいサイクルシーンの象徴ともいうべきショップ「カーニバル」を
江川芳文氏(Mad Hectic/T-19)らとともに渋谷にオープン、
同時にT-19クルーのほか藤原ヒロシ氏、立花ハジメ氏のライド、代々木ファンタジーナイトレースの様子などを収録した
DVDムービー「Street Life」も制作し、年月が経ってもあの頃と同じ感覚、同じ情熱で走り続けている。
そんなアキラ氏が当時のスケート話から最近のサイクル事情までたっぷりと語ってくれた。


 

−−今日はよろしくお願いします。まず僕にとってアキラ君と言えば足立区の高架下にあったスケートパーク「アキラットパーク」なんですけど・・・・

「お〜懐かしいね。あそこ来てた?」

−−はい、何度か。当時都内でスケートパークって言ったらアキラットぐらいしかなかったし、
セクションもヤバくて雨でも滑れるっていう。あれ全部自作ですよね?

「うん。廃材かっぱらって全部自分たちで作った(笑)」

−−アキラットも含めてあの頃からアキラ君はやる事が抜き出てたっていうか。スポットでも誰も思いもつかないトリックをいきなりメイクしたり、いつも人とは違うオリジナルなスタイルがあって・・・・


「ホント〜? あの頃はいまと違って情報も少なかったし、トリックももちろんだけど、それ以上に限られた場所や環境の中でどれだけ楽しめるかってことばっかり考えてたからね。街の遊びにルールなんてないし、パークにしてもなきゃ作るってだけで」

−−そういえばアキラ君っていつもゴンズの板に乗ってるイメージがあって、アキラ君を見てるとゴンズを好きなのがすごく良く分かります

「ゴンちゃんね。乗ってたね、エアジョーダン履いて。ホント好きだったな。今でも怪我したり調子悪かったりすると、原点戻ろうってゴンちゃんの映像をネットで探して見たりするんだけど、まだ生きてるっていうかさ。すげえ復活してきてるし、チャリでフリップやろうとしたりとか今でも狂ってるよね。でも狂ってるくらいの方がいいと思うよ。スキルやトリック云々じゃなくて、スケートはやっぱり発想力とか想像力だからね」

−−アキラ君の場合、その発想力や想像力がそのままスタイルに直結してますもんね。そういう意味ではいまは情報も多いし、環境も整ってそれはそれで素晴らしいことでもあるんだけど、自分たちで何も考え出さなくていいっていうか

「確かにそういう時代だよね。なんでも与えられちゃってるから。まあ俺はいまだにどこ行っても逆、逆に考えちゃうんだけどね。パークでもこっちからできるなら、あっちからもできるだろとかさ(笑)」

−−あの頃はなんでも自分たちで試行錯誤したりするのが楽しかったんでしょうね。パークとかも面白いけど基本は街にあるものでいかに遊べるかっていうことがストリートスケートだったし

「まったくそうだよね。街をマニュアル通りに滑っても意味ないし、結局自分の想像力次第ってところが面白いんだよね。ただ今は大会に行ってもひとつのセクションに並んでやったりとかさ、それって俺は少し違うと思うんだよね。お前らがそこやるなら俺はこっち行くよっていうようなノリがなくなってない? 昔は同じセクションでもびっくりするようなことをやっちゃう奴がたくさんいた。トリックの難易度じゃなくてスタイルで競い合ってたような気がするよね。いくらトリックが上手くて、たとえコンテストで優勝しても、スタイルがなかったらみんな納得しないし、しまいには服がダサイとか言われたりもしてたからね(笑)」

−−確かに。エアのデカさにこだわる奴だったり、とにかくスピードだったり、トリックの数が少なかったこともあるんだろうけどみんな自分の滑りにどうやって個性を出すかみたいなことを大事にしてたし、それがスタイルだった。当時はファッションにしてもスケートシューズなんてバンズ、ヴィジョン、エアウォークぐらいしかないからワラビーで滑ったりする奴とかもいて、逆にそれがカッコよく見えたりして

「分かる分かる。ちょっと話飛ぶけど、前にヨッピーと新宿のバーニーズ行った時に、店員がヨッピーの履いてた靴を見て、『その靴はどちらで買われたんですか?』って聞いてきてさ。そうしたらヨッピーも正直に『あ、プーマのマーク剥がしただけです』とか恥ずかしそうに答えちゃって、店員さんも『そ、そうなんですか???』みたいな(笑)。2人ですげー爆笑したことがあって。もう最高だよね、ヨッピー。彼の手にかかると全ての物が新しく見えちゃうし、アナログ時計をしててもデジタル時計に見えちゃうような不思議な力があるんだよね。でも、それはヨッピーが圧倒的な自分のスタイルを持ってるからであってさ、しっかり自分を持ってる人間は何やっても人とは違うカッコ良さがあるってことだよね」

−−なるほど。ところでアキラ君ってスケート始めたのっていつですか?

「中1の頃かな。流行ってたからね。仲良い友達とムラサキ行って9800円のコンプリート買って。まだバリフレックスが中堅みたいな時代で、その後にUSのデッキとかに手出せるようになってって感じかな」

−−80年代の終わりの頃ですよね?

「そう。まだスケーターじゃなくてスラッシャーって呼ばれてた時代。街滑っても『あ、スラッシャーだ』って(笑)。とにかくもう夢中で滑ってたね。上野公園でよくサルーダ(T-19)なんかと滑ってたんだけど、上野公園で滑り終わって『じゃあね〜』って別れるでしょ。でも滑り足りないから一人で密かに練習しようと思って自分たちのシークレットスポットに行くわけ。そうするとすでにサルーダがいるんだよ!(笑)。お互い『何やってんだよ!』って。もう滑っても滑っても滑り足りないってくらい滑ってたってことなんだけど」

−−抜け駆けしてもすぐバレちゃうくらい(笑)

「でもさあ、サルーダとかともそうだったけどあの頃は良い意味で仲間内でも距離があって、お互いライバルじゃないけど競い合ってたからね。やっぱりスケートでも自転車でもなんでも、ある程度そういう争いがないと俺はダメだと思うよ。仲良しこよしだと話し始めちゃってりして止まっちゃうでしょ。それで年食っちゃうからね。当時は原宿のエリート坊ちゃんたちには負けねえぞとかさ、上野でもムラサキとマックスで威嚇し合ったりとかあったもん。そうやって自分の中で競い合う相手を作ってった方がお互い進歩するような気がするんだよね」

−−確かに昔はみんな気軽には話しかけられない雰囲気がありましたもんね


「そうでしょ。それでいいんだよ。下の連中はやっぱり緊張感もあるだろうし、逆に上の奴らは突っ張ってないとっていう。俺は自分がこの人すげえなって思ったら変に近づいたりしないもん。それよりその人から刺激もらって自分はもっと頑張って、それで逆に今度は自分が刺激与えられるようになりたいって思う。仲良くなるのは後からでもできるからさ。だからあの頃のスケーターって以外に無口だったよね。若かったしいつも気張って突っ張ってさ、でもそれって意外に大事なんだよね。結局どんなに気張ったり競い合ったりしても、同じ乗り物が好きなんだから気が合わないわけないんだし」

−−当時はアキラ君より上の世代もそういう人たちが多かったんじゃないですか?

「うん。俺も色んな大人の人たちに面倒見てもらってきたから。特にオーさん(大瀧ひろし氏)の存在はデカかったな。だって日本でドッグタウンだ!とか言ってた頃にオーさんは実際にLAのドッグタウンで働きながらスケートしてて、アーロン・マレーとかと一緒に生活してたんだから。日本人であり得ないでしょ。しかも俺ら10代のガキどもをサンフランシスコに連れてって向こうの大会に出させてくれたり、スポンサーをつけてくれたりとかしてくれて。その頃のオーさんってまだ22、3才だよ、その若さで信じられないでしょ?」

−−信じられません

「自分がそういう大人になれてるかって言うと分からないもんね。だからオーさんがT-19を作るっていう時に声かけてもらった時はすごく嬉しかったな〜。それももう10年以上前の話なんだけどね」



 

−−そういえば最近はT-19もサイクルギャングと化してますが、そろそろ自転車の話でも。アキラ君がフィックスに乗り始めたきっかけから聞かせてもらってもいいですか?

「っていうか今思えば必然だったんだよね。もう4、5年前かな、車の免許取られちゃってさ。スケートじゃ荷物運べないし、電車は切符とか買えないくらいタイムスリップしてるからどうしようってなって。とりあえずマウンテンバイク買ってみたらチャリが結構便利だってことに気づいて、それでもっと速いのが欲しくなってロードバイクを買ったんだよね。色々チューンしたりしてあれはあれでホントに良い乗り物だった。F1のレースカーみたいだったから。アップダウンでブレーキ、ギア、ブレーキみたいに乗ってると、自分がピアニストみたいに思えてきちゃったりして(笑)」

−−へえ、じゃあ初めはロードで色々遊んでから?

「そうそう。それで街走ってるといま思い返せばメッセンジャーなんだけど、スタンドとかしてる奴いるでしょ。俺もやってやるってなるじゃん。でも当時はフィックスなんて知らないから、一生懸命バランスだけでスタンドしたりして(笑)。一度俺がスタンドしてたら、あ、もちろんバランスでね(笑)。したら自転車屋が目の前にあって店員がスタンドしてる俺をジーって見てるわけ。これは思って軽くかましちゃうよってなるじゃん? で、縁石にジャンプして上がろうとしたんだけど、見事にジャックナイフ状態で一回転しちゃって(笑)。体も結構痛いのにチャリンコ持ち上げて意味もなく前のウイール回したりして、『おっかしいな〜』とか言っちゃったりして(笑)。そのまま何もなかったかのように通り去ったよ、うん。バカだよね〜、俺。つい負けず嫌いの根性が出ちゃって」

−−ダハハ。それ超面白いですね。でも結局ギアが固定かフリーかの違いだから見た目だけじゃ分からないですもんね

「でしょ、固定ギアがどういうものかとかその頃は全然知らないし。で今度はスキッドとかいう技もあるって聞いて、なんだよトリックとかもできんじゃんって。でも構造とか知らないから、バカな俺がまず最初にやったのがコースターブレーキ!(笑)」

−−うわ! さすが!(笑)

スキッドなんて簡単でしょとか言って。今思えばそりゃ簡単だろって話なんだけど(笑)」

−−すげ〜。でもだいぶ近づいてきました

「(笑)。で色々調べたりしてくうちに、ようやくピストなる乗り物があるってことが分かって、色々パーツ集めてフレームも得意のオリジナルペイントで塗装したりしてなんとか1台組み上げたわけ」

−−おお、ついに!

「言っとくけどこの話もすごいよ(笑)。それでもう上がりまくって塗装も半乾きのままモゴモゴしながら近所を乗ってみたんだよね。でコンビニに寄ったんだけどさ・・・・」

−−ええ、それで?

「出てきたらないんだよ! チャリが!」

−−え? うそ!?

「目こすってあれ? あれ? みたいな・・・・。信じがたい光景でしょ。結局2、3時間探し回ったあげく見つからなくて、組み上げたその日にまだ何時間も乗ってないのに盗まれちゃって・・・・」

−−落ちますね・・・・

「かなり落ちたけど、まああんまりメゲててもしょうがないからって切り替えてすぐもう1台作ったよ。まだ前後カンパのラージハブで決戦用とか付いて1万円とかでパーツも安かったからね。でもところが結局盗まれたバイクもオークションに出てさ、HAL君(カーニバル)がサクラ落札してくれて、山奥までヨッピーと警察と一緒に行って取り返したんだけど」

−−それもすごい! しかし不幸中の幸いですね。最近は本当に盗難多いから気をつけないとですね。まあ縁起の悪い話はその辺にして。でも当時はそんなに情報もないし、自転車ひとつ組むのも大変だったんじゃないですか?

「うん、そうだね。まあロードに乗ってたからフィックスはパーツが少ないし楽だったけどね。あとはまだメッセンジャーだったHAL君が色々教えてくれたりして」

−−そこでHAL君が登場するわけですね?

「そうそう、あの男ね。たまたまHAL君とジェシー(T-19)が知り合いだったからそのつながりで。俺の周りのほとんどの初バイクはHAL君が組んでくれたと思うよ」

−−なるほど。でもその頃って自転車にハマってたのはアキラ君ぐらいでしょ? 周りの反応とかはどうでした?

「いつもそんなに汗かいてどうしたの? みたいな(笑)」

−−ですよね、チャリも本気っぽいし。初めて固定ギアに乗ってみてどうでした?

「ヤバかった。ロードが新幹線ならフィックスは蒸気機関車に乗ってる感じ。スキッドだってこうやってやるらしいよぐらいの情報しかなかったから、ペダル止めようと思っても前に突き飛ばされちゃうしで大変だった」

−−やっぱり怪我とかもしました?

「もうコケまくったね。でもまあそこは慣れてる部分だし、むしろ好きだったりもするから全然平気だったけど」






−−それが2、3年前とかですか?

「そうだね。それである程度乗れるようになって、しばらくしてHAL君からメッセンジャーのレースとかもあるって聞いて速攻行って。でもそれって告知とかフライヤーがあるわけじゃないし、もう完全な口コミの草レースって感じで。30人くらいの大会だったんだけど、俺ら以外は当然みんな本物のメッセンジャーたちで。そこに紛れ込んじゃったから、誰この素人たちって感じだった(笑)」

−−ダハハ、それでレースにも出たんですか?

「うん、2回くらい見に行ってから出た。それでも乗り始めてまだ数カ月だったから、その状態でレース出るとか今じゃ考えられないでしょ? スキッドとかトリックはスケーターだから結構できて、あとは瞬発力と直感でそこそこ走れたとは思うんだけど、速さとスタミナはまだまだ全然だったね」

−−結果はどうだったんですか?

「それがまた笑える話でさ〜。レースってポイントとかクイズがあったりルールがあって、俺らはいきなり出たばっかりだからまずルールがよく分からないでしょ。でもとにかく初めてのレースだから興奮してるから、もうルールとかコース関係なくひたすら真っ直ぐダッシュ、みたいな(笑)。で、普通メッセンジャーのレースって長くても1時間半ぐらいらしくて、俺らそんな感じでずっと友達と2人で3時間ぐらい走っちゃって。しかも真冬なのにタンクトップ姿で(笑)。それでさすがに主催してる人から電話が鳴って『もうそろそろ締めますよ〜』って」

−−ケツ切られちゃったわけですね

「そう。で、チクショーってなってゴール地点に戻ったんだけどさあ、みんな待っててくれたんだよね。もうレース終わってるのに。しかもゴールの手前から拍手までしてくれて! 俺たちの帰りが遅いだけなのに、なんて良い奴らなんだろうって感動しちゃって。ホント温かい人たちで。だってスケートの大会だったらヘタクソな奴とかに絶対拍手とか起きないもんね(笑)」

−−なるほど。乗るだけの楽しさだけじゃなくて、そういうメッセンジャーとの出会いだったり新しい交流や新しい刺激を受けたりってことも大きかったんじゃないですか?

「それはすげえデカい。俺なんかずっとスケートで生きてきて、正直30過ぎて何か新しいことにハマるとは思ってもなかったし。それにメッセンジャーのシーンもすごく小さくて、昔スケート始めた頃の業界の雰囲気っていうかそういうのを感じちゃって。で色んなメッセンジャーたちとも交流するようになって、俺も洋服(アキラ氏がディレクションを務めるレーベル「Meddora」)やってるから少しでもと思ってイベントに協賛したりして。それがMixpressionだったりしたのかな」

−−へえ、メッセンジャーの人たちも実際面白い人たちが多いですもんね

「そうだね。みんな芯が強くて流されないし、カッコ良い人たちが多い。やっぱり圧倒的なリアリティーがあるっていうかさ。そんなリアルな人たちの秘め事みたいなシーンに、俺たちは正面切って『お邪魔しまーす』って入ってったわけだから(笑)。それでもメッセンジャーの人たちは温かく迎えてくれたし、そういう意味で彼らとの出会いはすごく大きかったよね」

−−なるほど。確かに昔のスケートシーンに似てる部分は感じますよね

「そうなんだよね。さっきの話じゃないけど、まだ環境があるわけじゃないし情報も少ないでしょ。でもそこが逆に面白いっていうかさ。シーン自体が小さいからなんでもありなんだよね。これから新しいことがもっと生まれるだろうし、そういう感じがまた楽しい理由なんだと思うな」

−−それこそ想像力と発想でまだまだ広がりがあるっていうか

「うんうん、メッセンジャーの大会とかも色んなこと考えてるからね。鬼ごっこみたいなレースとかあるの知ってる? 鬼が初めは1人で捕まると鬼になっちゃうっていうゲームなんだけど、これが結構面白くて。そういうゲームを考えたりとかって面白いよね。一度その鬼ごっこで勝ったことがあって、その時はホント嬉しかったな〜」

−−お〜、すごい! メッセンジャーの人たちから逃げ切ったってことですもんね

「速さでは勝てないけど、とにかく逃げてやるって思って。ダーって坂登って一番上でスキッドで回転してそのまま一気に坂下って。したらみんなうわーってすごい悔しそうな顔してて。もうそれの連打でなんとか逃げ切って、初賞金もゲットできて嬉しかった(笑)」

−−でも誰かに与えられた遊びじゃなくて、自分たちで編み出した遊びだったりするのが余計楽しかったりもしませんか?

「そうなんだよね。そうやって自分たちでどんどん新しい遊びを生み出していってるし、それが逆に完成されたシーンじゃないから面白いんだよね。トリック見てもまだ誰かがオーリーしたくらいでしょ? そのうちガードレールくらいぶっ飛んじゃう狂った奴とか絶対出てくるよね」

−−確かにスケーターもすごい勢いでフィックスに乗り始めてるし。やっぱりみんな上達も早い

「SFのダウンヒルの大会でジュリアン(・ストレンジャー、SFのボードカンパニーANTI HEROのボス)が勝っちゃったりとか聞くと分かる。それりゃそうだよね、っていう感じじゃない。すごく感覚的にスケートに似てるところがあるから、スキッドはパワースライドで、街をスキッドしながら流してっていうのはスケートのクルーズみたいな感じ。でもチャリはスピードももっと出せるし、おまけに音も静か。スケートもチャリも基本はプッシュ、エンジン無しの1人乗りで街を走れるってことが一番大きいんじゃないかな」

−−スケーターはまたメッセンジャーの人たちと走り方も違いますよね

「メッセンジャーの人たちって仕事で毎日何十キロも走って、仕事終わっても乗ろうとはあまり思わないでしょ。俺らはチャリ乗ってスポットからスポットへ遊びに行くって感覚。やっぱりトリックとかはやっちゃうし。でもそういう中でもHAL君みたいなマルチな人が出てきたりするのが面白いよね。走りもトリックもイケて、もう最強だよね(笑)。やっぱりまずは速く走ってなんぼの乗り物だからトリックだけできてもね」





−−アキラ君が作った「STREET LIFE」のDVDはそういうアキラ君たちの普段の走りっていうか、スポットからスポットへ爆撃機のように攻めてる感じが良く出てて。あのフィルムはどういうきっかけで撮ろうと思ったんですか?

「とりあえずみんな良い年してるし、どうせ遊んでるだけならちょっぴり記録を残そうかなと思って。去年の後半に始めて撮影期間は2カ月ぐらいかな。いつもの仲間といつもの遊びみたいな感じで撮りたくて。トリックだけのものじゃなくて、やっぱり街中を走り回って好きなスポットで遊ぶのが普段の俺たちの走り方だし、それをそのまま見せたかった。動きがないとつまらないと思うし、走りながらっていう部分をうまく出せるようにね」

−−HAL君の六本木通り爆走シーンとか、シンゴちゃんの新宿もヤバかったし、実際みんなガンガン走ってる。なにしろ楽しそうでタイトル通りすごいストリート感のあるフィルムでした。あれはアキラ君が初めて作った作品で、しかも全部チャリで併走して撮ったって聞いてまたびっくりしましたね。ヨッピー君のパートでアキラ君が息切らしながら明治通りを必死で追いかけてる感じとか。

「ホント大変でした(笑)。まあスケートとかスクーターとか色々やり方はあるんだろうけど、俺は単純に同じ乗り物で撮りたくて。やっぱりスピード感が違うんじゃないかなと思って。だから自分で自転車に乗りながらカメラ回して、俺のパートはシンゴ(T-19)がやってくれて」

−−あと出てくるスポットもヤバかったですね。場所は都内のどの辺ですか?


「新宿、渋谷、あと中央区あたりのいつもみんなで走ってるスポットだね」

−−いや実際初めてのフィルムとは思えないぐらい完成度が高くて、すごい東京感も出てて外国の人とかにも是非見てほしいですね

「そう言ってくれると嬉しいね。でも実際すべてが新しいことだらけだったからね〜。特に凝った作りをしてるわけじゃないし、それぞれのパートがあってスラムシーンがあってっていうまんまスケートビデオのスタイルで。それとちょっと大人になってきたから、音は著作権フリーでやりたくて、そうしたら(藤原)ヒロシ君と(立花)ハジメさんが音源を提供してくれたり、そのほか色々手伝ってくれた03やヨッピー、ツトム、ケニー、みんなにはホント感謝してます。おかげで大人になれる第一歩を踏み出せましたって書いといて(笑)」

−−是非次のフィルムも期待してます! 最近はYouTubeとかでアップしてる人たちも増えてきて、そういうきっかけにもなったフィルムでもあると思います

「まあ一度形にすると良くも悪くも評価されるだろうから、とにかく当時の自分たちができるすべてを出したつもりで作ったんだけど。映像に残すことに関しては実際迷ったんだよね。スケートがそうなっちゃったように、ビデオ撮りのために滑るっていうのもまた違うでしょ。やっぱり街に出て滑って走ってっていうライブの感覚が面白いわけで、トリックにしろ走りにしろどんどん進化していくわけだし。映像作り終わってボーっとしちゃったところもあったし。あれを見て俺たちをデモだったりイベントに呼んでくれたりすると面白くなるんだけどね」

−−でもいま色々カーニバルでもスクールやったりして動きが出始めてきましたよね。

「スクールに関してはまずスキルがないと危険な部分もあるから、やっぱり店やってる以上その辺もしっかりやっていこうって。ほかにも何かしらのイベントだったり色々これから仕掛けていく予定だね」

−−そうそう、是非カーニバルのことも聞かせて下さい。オープンのきっかけはなんだったんですか?


「やっぱり夢中になっちゃったからね。それとたぶん俺らみたいな奴もいっぱいいるんだろうなあってヨッピーが思い付いて。いや乗り始めた頃にロード屋さんとか行くでしょ。でもパーツとかよく分からないから『そのチェーンにつける輪っかみたいなの下さい』って感じだったからさ。周りの人たちにクスっとか笑われたりして(笑)。実際パーツの名前なんてどうでもいいし、勉強なんてしないじゃない。だいたい初めはギア比も知らないから前51、後13とかで乗ってたからね、俺。見た目はバシーンってしてるからいいんだけど、乗ってみるとすげーなこれとか思って。でもこういうもんだと思ってたし、実際しばらく気にならなかった(笑)。それよりもドロップハンドルの角度とかを完璧にしたかったりとか」

−−見た目の方が気になる(笑)

「そうそう。スプレー缶大量に買ってフレームなんて毎日気分で塗り替えちゃう(笑)。何重にもペイントしてるから重くなるよとかって言われたりもしたんだけど、重さとか具体的によく分かりませんって感じで。それよりも完全に気分先行型っていう(笑)」

−−確かにプロショップとかは対応が割とシビアだったりしますよね

「だからこういう店があったらいいかな〜って単純に思って。俺らみたいな奴でも気軽に来られるような」

−−僕なんかはカーニバルのエレベーター上がって扉が開く瞬間ワクワク、ドキドキするっていうか。そういう刺激的なショップってもうほとんどないから。昔のストーミーやバイオレントグラインドじゃないけど、そういう感じがする店っていうか

「あ〜、そう言ってもらえると嬉しいよね。うーん確かにグラインドはビルの2階だったし言われてみれば似てるかも(笑)。でもメッセンジャーからスケーターまでホント色んな人たちが遊びに来てくれるし、いつまでもそういうワクワク感がある店だったら良いな」

−−分かりました。それではPedalmafia.comのサイトを見てる人たちにも何か

「身近な友達だったり、スケートやらなくなちゃった人とかも自転車乗る人が増えてきて、色々なみんなとまた一緒に同じ乗り物で共感して遊べるっていうのはすごく楽しいから。素直にもっと色んな人たちに乗ってほしいと思うよね」

−−ありがとうございます! 今回はスタイルマスターのアキラ 君ということで、最後にこれからの流行のスタイルを聞いて締めたいと思います(笑)

「(笑)そうだな。うーん、じゃあズバリ『逆輸入』! メッセ ンジャーの感覚をスケートボードにも取り入れて、ドロップハンドル 持って滑ったり、右折信号を曲がったりして。"スケメンジャー" っていうのはどう? (笑)」

−−ダハハ、さすが発想が段違い。それではこれからは「逆輸入」スタイルが来る!! ということで締めさせてもらいます(笑)。今日は長々とありがとうございました



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